雑記

長くなりそうな話を投げています

おわまり感想文

12月19日にふせったーにあげてたやつに加筆修正したものです。

 

おわまりネタバレ全開感想文。めっちゃ長い。好き嫌いで言うと嫌いではないけど人に勧めるかと言うと慎重になる。でも他人の感想は聞きたい。って意味ではまさに「生きる」を描いた作品だと思います。

やはり第一にはまさきくんの出産ですが、初日に女子高生役だって記事が劇団公式から流れてきてネタバレにも程があると思ったけど実際見たら教師の子供を妊娠中だし劇中で出産までしたので女子高生役という情報なんてジャブでしかなかった。貴重な推しの出産シーン…。

まあそういうのは置いておいて真面目に。

 

一言で言うとSF作品の「じゃない方の人達」の物語だなと思った。これがSF映画の主人公だったら知恵や勇気や運や愛や友情で無事生還したり誰かの命や地球を救うんだけど登場人物たちはたまたまあの日あの車両に乗り合わせただけの一般人でここにはそういうヒーロー・ヒロインは一人もいなかった。

今回の登場人物たちってわりと皆物語の主人公になれそうな設定はあるんですよ。
一度は引き裂かれたものの恋人の本心を知り彼女とこれから産まれる赤ちゃんを助ける教師。
今まで仕事に追われてないがしろにしていた家族のために生還するサラリーマン。
過去に捨ててしまった息子と再会し二人でピンチを脱出して再び絆が生まれる親子。
世の中的には落ちこぼれと言われる人たちが協力して一発逆転。(デデデイはこれだった。意識してるのかな?)
ぱっと思いつくだけでこんな感じの話が作れそうで。でも誰一人そんなことにはならない。一人予知夢という特殊能力を持っていたけれどそれが活かされることも特にない。
記録してた映像が後々誰かに発掘されて…みたいなのもなさそう。
でも人生ってそんなもんで。皆それぞれ色々抱えてるんだけど映画の主人公のようにはなれない。通りすがりだから相手の物語に深入りすることも最後まで見守る事も出来ない。電車の中の人達を観察してそれぞれどんな生活してるのかなって考えてる時に浮かんだアイデアらしいけどまさにそんな感じの群像劇だった。

たくさんの登場人物がバラバラに行動してバラバラに自分の物語を進めていく中、終盤「女子高生の出産」にすべての視線が集まる。
皆、自分の人生や境遇や想いを重ねて今日会ったばかりの女子高生に向けて「頑張れ!」「産め!」という。自分の想いを重ねた結果家族が気になって家に帰る人までいる。「元気な赤ちゃん産めよ!」ものすごい他人事だ。潔すぎる。

小惑星が衝突し地上はもうどうなっているか分からない、医者もいない、子供の父親は自分に裏切られたという絶望のまま死んだ。繰り返し「産みたくない」「産みたくない」と泣き叫ぶ少女。
これはこんな環境でも産まれてくる生命に希望を託す、皆の心が一つになる美しいシーンなのか。
それとも自分ではない何かに勝手に気持ちや自分の物語や希望を重ねている残酷なシーンなのか。

 

ラスト。折り重なって倒れて動かなくなった生死不明の登場人物たちの中に産声が響く。
自分に覆いかぶさっている人たちをどけることもできない中、女子高生は生まれてきた赤ちゃんを抱くことも顔を見ることすらもできないまま「こんにちは」と声をかけて物語の幕は下りる。
あれは自分の子供に対する母の愛情なのか、
こんな状態でも産まれてきた生命に対する労りと祝福なのか、
今まで逃げて、流され、守られてきた彼女がやっと何かと向き合ったという物語の始まりなのか、
それとも自分の出産に向けられていた無責任な矢印が生まれ落ちた赤ちゃん個人に移行された安心なのか(さすがにこれは悪くとりすぎかな)*1

 

パンドラの箱からは地上におけるありとあらゆる災厄が飛び出したけれど底には希望が残った、というお話。
それは「『最後には希望がある』と思うことですべてを投げ出し、諦めて、絶望することができなくなったという災厄」なんていう意地の悪い解釈もあったなということを含めて思い出した。

 

どの登場人物に対しても明確な結末が描かれなくて(作中死んだと断言された教師くらい)想像の余地がたくさんある作品だと思うし実際色々考えてこんな長文を書いた。

今井さんも全員の物語を語る必要が無い。実際誰かの人生を全て知るってことはできなくて、断片的に知る事しかできないから的なことを言っていてそれは本当にごもっともだし。だからこういう風に見てる方に残るんだなと思う。
ただそれが上手いかというと、もうちょっとスマートにできたら良かったなとか。群像劇だとしてももうちょい強めの軸が欲しかったなってのが個人の感想ですかね。
ラストシーンが希望ならもっと分かりやすく、絶望ならば映画「ミスト」並みに打ちのめされる方が好みだけど、これは完全に好みだと思います。
他の方は何がどう終わって始まったと思ったのか聞きまくりたいな。


以下はただの太田オタの話です
これはまさきくんにすげえ役振られちゃったなってのが第一印象。めちゃくちゃ難解な役だし、ツイッター見るかぎり彼もまだ明確な答えはなさそう。
今井さんがどこまでまさきくん個人のことを彼女に取り入れたのか分からないけど、ドリフェスという後ろ盾が無くなりアイドルではなくなった彼が「自分の意志を貫けずに流されて守られて、でも最終的に子供を産み落とし作品の幕を閉じる人物」を任されたことに色々文脈を考えてしまう。推しの欲目だから。
千秋楽を終えたら彼なりの伝えたかったことや答えをききたいけどもやはり野暮ですね。
良い役だと思うし、熱演を生で見られて良かった。
あとずっと似たようなキャラが続いていたので今年最後に変化球な役を見られたのも良かったな。

あとまさきくんの足が細くて細い。抱き上げられてる時のお尻から太もものライン
が女子っぽくてドキドキしてたw

それとギター弾きながら歌ってるかぶさんが見てえというドリフェスでの夢をここで回収してしまってちょっと狼狽えたw

この役はWキャストでしたが多分今井さんの方がハマっていたのではないかなと思うので今井さん回見られなかったのが心残りです。円盤どちらも収録は難しそうだけども…ダイジェストの収録もなんか微妙だもんなあ。

*1:その後の今井さんの話とか聞くとやはりラストは希望の演出だったみたいなのでやはり悪く取りすぎました。すみません。